閣下が不用意に打たれたblog

噴火で変遷する西之島の火口や海岸線、暗礁などの海底地形等の図を衛星画像や各種資料から作成してます

ランドサットで読み解く西之島の海底地形

 

ランドサット8の色覚から

 衛星画像から得られるBAND別の画像を見るといつも思い出してしまう。ランドサット8に搭載されている機能のマルチスペクトルセンサの種類は、生物に置き換えて表現すると色覚の数という事になるのかなあと。

 例えば鳥類の色覚というのは、色覚の一旦退化した哺乳類である人と違って4色覚で、特に青以上の高周波である紫外線領域も認識できます。

 人には探知できない波長の光を見ることができるのは、さぞかし美しかろうと思いますが、しかしここからが本番。不便があれば工夫する。

 ランドサット8のオープンデータを存分に利用して、今回は最も紫外線領域に近いBAND1からBAND3を用いて海底地形をあぶりだす試みを紹介します。 

16ビットの画像が欲しかった理由

 最近QGISでデータを操作しはじめた自分、未だに児戯の様な拙さだが、自分が最初に取り組んだのは噴火前である西之島を撮影したランドサット8のH25/9/3画像だ。

 当ブログでも早期に西之島の暗礁図を紹介しているのが、この撮影日による下の記事です。

 この日のランドサットの西之島撮影画像は、各所でも噴火前のデータとして取り上げられています。自分は国土地理院地図を見て、この画像は海底地形データを抱えていると思って、これの解析に取り組んでいました。

 しかし今まで自分の使っている画像ソフトではtiffの処理能力は8bitまで。画像をばらしてもどうしても欲しい部分が解析できず、頑張っても下の画像レベルだ。ついに情報不足の限界(自分の精神世界の話)に達しました。 

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 とはいえ、言うほど悪くもない画像ですが、もう少し情報が入っているはずなのですよ~。

 

  違いの説明に続きますよ。

BAND1が捉える海底地形とは

 QGISでランドサット8の画像を開き、BAND1の普通にのっぺりとしたデータの中からノイズ領域を処理していくと、自分の欲しいと思っていたデータを引き出せました。

 それがBAND1の中間コントラストの強調画像で下図。画像の解像度は10m/PICです。

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 詰まらん白黒画像に見えますが・・喜んでUPするほど自分としてはスクープ!です。

 見る人には分ると思いますが、明らかに島の砂礫部分と海中の一定水深までは、BAND1は輝いていないのです。

 このBAND1の波長は水中での直進性が高いとのこと。この特性と結果を見ると、西之島周辺でBAND1についてはこう言えると思います。

  • 少なくとも西之島の砂礫と周辺の海域の海底地形は、BAND1に対して反射しない性質であり、ゆえに浅い海では黒く写る。
  • 一定以上の深さの海では海水がBAND1の光を反射するため、水深のある海は輝いて写る。

 

 またここで一定の水深と言う西之島の周辺の海底地形ついては、海図からプロットした海底地形図の記事を参照してくださいね。 

 

海図の記事はこちら。 

  このBAND1の浅い海では輝かないという特性を生かし、海は青く光るのBAND2、暗礁は緑のBAND3の両バンドを利用し、この3種を下記のレシピで合成しました。

  

BAND1減算、BAND2緑、BAND3赤、BAND8を背景。ランドサットの撮影日はH26/9/3の西之島です。画像の解像度は10m/PIC。

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 水槽の下側から見たオタマジャクシの画像・・ではありません。完全に似ているけど。

 ここで北西に薄く伸びるしっぽの形状は、波浪で巻き上げられた砂礫の濁りでしょうから、やがて消失します。これらの影響を無視すれば、西之島の海底地形が砂丘のように浮かび上がってきたのではないでしょうか。

 

 ここで同じものだけど違う処理のをもう一つ。

BAND1減算、BAND2シアン、BAND3赤。予め画像の解像度を高めた滑らか仕上げです。

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 なかなか良いかも。画像の解像度は再サンプリングさせてますので、滑らか仕上げですが少し細かくし過ぎたかな。 とりあえず自然なオタマジャクシのおなかの色に近づきましたね。

 

お次は位置合わせです

 今回は位置合わせで既知の海底地形の特徴が反映された画像なのかどうか、どう反映されているのか、あるいは勘違いなのか確認します。

 もちろん自分の描いてきた西之島の等深線と暗礁図を載せ合わせました。

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 おし!これは西之島周辺の既知・想定の海底地形の特徴と完全に一致。

 天王暗礁部分のぐるぐる暗礁形状も完全にオタマジャクシのおなかのぐるぐる模様と一致しましたね。いやそういうのでは無いはずだが・・。

 

判読と評価です

 水深30~40m付近を境に色合いの変化が明瞭に見えます。透明度40mと言えば相当美しい海だと思いますが、海中で観測しているのではなく海面上の大気圏外の宇宙からとらえているのだから、きれいな状況だったはず。

 そんな中、砂礫質が巻き上げられて濁った影響はあるものの、水深の浅い部分は明るく、深い場所は暗く表現されたと言えるでしょう。

 観察できる地形として、昭和噴火の前にあった大火口は、ここでは直径1km以上あるように目視できます。そして昭和噴火が埋め立てた火砕物が内側に明るく表示され、海中の火口の残痕が緑色の三日月形に見えます。

  興味深いのは平成噴火現在の火口の位置。この段階で既に凹んでいるように見えますね。

 こちらで名付けている各浅根地区も、ほぼ存在が確認できます。小夜浜暗礁以南の暗礁もすでに溶岩で埋まってしまいましたが、ここでも先の方に割れ目があるなどの特徴を現してくれました。

 

 以上の内容から、この手法を用いて海底地形を推定することには成功したと思います。良い画像を得ることが大切なのは仕方ないですが、そこをクリアすれば充分に情報を得る事が出来ました。

 BAND1の処理がキモだったのは間違いなく、今後は太陽光の入射角や撮影時期などを調べて、正確に評価できる条件を模索したいですね。

 海中の魚をダイブして捕まえるカツオドリらの捕食手法に、このBAND1付近の紫外線近辺の色覚が、重要な役割を果たしているのではないかと想像しました。 

 

以上です。

コメントどうぞ。

 

 

考察と裏の展望台

 ここまでの裏の判読により、噴火前の西之島は変態前のオタマジャクシのおなか側だった、という事が判明した。 これで噴火を経て完全変態した西之島が目指す最終形状も両生類のうち「カエル」である、という事で概ね決定的と言えるだろう。エラも確認できないし。

 あとは特徴から種の同定だが、茶色いし凸凹しているし溶岩がダラダラと流れているし、茨城の筑波にある産総研から提供されるデータである事も考慮すれば明白、ガマの油で超有名な「四六のガマ」こと「ニホンヒキガエル」これでどうだろう。

 すると噴出活動を活発化させるには、西之島を大きな鏡で四方囲えばOK?

  

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LandBrowserのクレジット表示 The source data were downloaded from AIST‘s LandBrowser, (http://landbrowser.geogrid.org/landbrowser/index.html/). Landsat 8 data courtesy of the U.S. Geological Survey.