H271112ランドサット8の捉えた西之島
週間火山概況から
ランドサット8の今回の撮影日である2015/11/12には、海保も西之島の観測をしていました。この資料が週間火山概況に出ていましたのでご紹介します。
「12日に第三管区海上保安本部が実施した上空からの観測では、第7火口から断続的に灰色の噴煙を噴出していました。噴煙の噴出は数分間に1回程度の噴出間隔で、継続時間は1分程度でした。
西之島の北海岸に沿って長さ約1,800m、幅200~300mの範囲及び南西海岸に沿って長さ約1,700m、幅約100~250mのそれぞれの海域に、ごく薄い黄緑色の変色水が分布していました。」
この写真は2015/11/12午後の2時20分頃とのこと。西之島付近のランドサット8の撮影は今回AM10時6分頃ですから、少し後のものとなるようです。
火山灰混りの茶色い噴煙を上げている様子は頼もしい。そして火砕丘南側の黒いエリア、今回報告にはなかったがこの黒は新しい溶岩の黒だと思いますよ~。
ナゼナラばと行きましょう!
概況画像の前に
といってその前に今回はランドサット8の奇妙なバンドを紹介します。
最初にその奇妙なバンド、2015/11/12ランドサット8の撮影した西之島のバンド9画像です。画像の解像度は15m/px。
見れども雲ばかりで西之島が何も映っていません。それどころか噴煙も写っていません。このバンドは赤外線の範囲にあるのですが、今まで高層の雲しか映ったことが無いんですね。
概況画像
下は同日ランドサット8の撮影した昼の西之島。普通のパンシャープン画像です。
ランドサット8の撮影時間は数分あるのですが、どのバンドも一斉に撮影するわけではないため、移動するランドサットの位置の違いによって高層の雲はぶれたように表現されるようです。
バンドはB4赤、B3緑、B1青、B8背景。画像の解像度は15m/px。
高層の薄い雲の下に西之島の噴煙が茶色く出ています。西之島はなんとなく見えるけど清々とは見えない、このチラリズムがいかんな。全くけしからん。
雲の影響を除去
そこでこのけしからんパンシャープン画像を、雲だけが映ったB9で減算してみます。
バンドはB4赤、B3緑、B1青、B8背景、B9減算。画像の解像度は15m/px。
スマヌ、技術と執念が不足していてお邪魔な雲を綺麗には除去できませんでしたが、噴煙の形状を把握することは出来ると思います。
赤外線画像に続きますよ。
フォールス赤外線のパンシャープン画像
さていつもの解像度に戻して溶岩流画像。
バンドはB7赤、B6緑、B4減算、B8背景、さらにちょっとB9減算。画像の解像度は10m/px。
偽カラーですので、噴煙がおかしな茶色に見えたりします。高温の場所は火口の南南西側。その周りにも多少高温のエリアがあります。
下は夜間風画像。
バンドはB7赤、B6緑、B9減算。画像の解像度は10m/px。
一番の輝きは火砕丘の南側です。
位置合わせ
前述パンシャープン画像を使用して位置合わせします。
バンドはB4赤、B3緑、B1青、B8背景、B9減算。画像のスケールは100m毎のゼブラで図示。海岸線は7/28の地理院から。
海岸線の変化も多少は分かる感じです。丸くなってきましたね。
今回は火口の付近の熱活動をしっかり読みたいので、赤外フォールスも載せてみました。
バンドはB7赤、B6緑、B1青、B9減算。画像のスケールは100m毎のゼブラで図示。海岸線は7/28の地理院から。
火砕丘の周辺リングもうっすら見えます。
さあ久々にまともな熱源が南側に来たので、過去の火口位置座標を表示して位置関係を確認しようではないか。
ここで座標点のコメントは右側の文字列になります。今回の流出活動位置はおやまあ、2014/2/16に活動していた旧称南火口の芯ですな。
赤色立体図合わせ
お次、赤色立体図には噴煙の無い処理を乗せます。
バンドはB7赤、B6緑、B4減算。画像のスケールは100m毎のゼブラで図示。赤色立体図は7/28の地理院から。
赤色立体図は千葉先生の発明したアジア航測の特許技術です
むむーん、ここに来たか~。分かってはいたが感慨深い。 火砕丘近傍で最も浸食が懸念される方角ですからね。
そしてランドサット8の観測では20日前に、ほぼ同じ場所でうっすらと熱源が観測されています。
ほほーう、実に興味深~い。
判読です
火口から茶色い噴煙が上がっている事と11/8の観測からも、爆発的噴火は継続的に復活していると言えそうです。
そして海保の報告写真も補足して読めば、火砕丘の南南西の黒い色は新しい溶岩流で、火砕丘の横腹から溢れ始めたのを確認できたと言えそうです。
この開口位置は10/23にもほぼ同じ場所でうっすらとした熱源が確認されていて、しかし10/30と11/8には確認できなかった場所。一旦活動は中断していたが時間的に近いことから、この溶岩流出口の開口の予兆だったと考えられそうです。
ここで予兆としてのメカニズムは検討しないといけませんが、ざっくり旧南火口付近に向かって溶岩流の貫入が一度あり、冷え切る前に再度圧力がかかって流出に至ったのではないか。南火口は去年の12月頃まで穴が開いていた場所ですから、旧火道が再利用された可能性もあり得そうです。
勢いはまだ読めませんが、オープンデータであるランドサット8で火山活動の予兆を読み取れたとすれば、その意味でも重要な出来事だと思います。
今度の11/20は平成の噴火活動が確認されて2周年。今後の活動がどうなるのか、興味は尽きない節目を迎えそうです。
記事は以上です。
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