閣下が不用意に打たれたblog

噴火で変遷する西之島の火口や海岸線、暗礁などの海底地形等の図を衛星画像や各種資料から作成してます

H290604西之島クルーズなどから

 

2017/6/6はランドサットの夜撮影という事で、今夜は期待したいところですが、

その前に噴火再開後初!の西之島クルーズが6/4にありました。

当日は雨交じりの天候で残念な事でしたが、活動中の西之島に肉薄するツアーという事で、参加者の方々は貴重な体験をされたことと思います。

 西之島クルーズ

ツアーの主役はこの船、おがさわら丸です。

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「素晴らしい船だ!!・・・ムスカ、娘は白状したか?・・」

おっと、船を見るとついつい数少ないセリフが出てしまいますな。

引用はフジテレビからです。

ジェット機が束になって離陸していく、と表現されるストロンボリ噴火の轟音が響いています。岩をも撒き上げる、強力な噴気です。

女性陣らの「すごーい」「大き~い」などという言葉も聞こえてきて、西之島ウォッチャーの諸兄らもさぞやご満悦、といったところでありましょう。

 

えーさて面白かったのはサーモカメラ。ハンディカメラの大きさでしたが、写っているのはプレデター視点の画像でしたね。

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山体の左側に広がるのは南西に広がる活動中の溶岩扇状地、そして山頂からポンと出たのが高温の噴気です。高温噴気周辺には飛散する溶岩片も見えますね。

肉眼では見えない山頂部でも、こんな形で撮影できるんですね。素晴らしい!

 

サーモカメラは山頂部もアップされていますが、

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山頂部分が随分平らになってます。様子から考えると、当初よりも爆発力ある噴火が発生して細く尖った山頂部分をすでに崩したものと思われます。想定してはいましたが、ちょっと残念。

 

参加者の動画はこちらが見やすかったです。


動画で縦パノラマ

さて西之島の詳細な解像度の画像が最近ないので、この西之島クルーズにも期待していたのですが、画像としては晴れた時のようには判読できません。

そこで2017/5/25にNHKの撮影した画像から動画を継ぎ接ぎして溶岩流全体を見える画像を作りました。

 

NHKの撮影した5/25は、先日記事にしたランドサット8の撮影日と同日とということで、遠景で見ているランドサット8のデータと、現場状況との整合を確認してみます。

中身は軽いがちょっと重い画像です。

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画像の接合部は補正処理するものですが、ポンポン乗せて大体良かったので合わせただけです。そもそも自分用に作ったモノでして処理も甘くて申し訳ないですが、しかしこの画像ならば火砕丘から流出口を通って、一気に海へと下る溶岩の流れがはっきりわかります。

途中に切れ目がないため、まだ溶岩トンネルが出来ていないのではないか。また西之島溶岩流の特徴であるキューティクル地形も、トンネル出口がない状況では生じていないと思います。

  

この時期の参照動画は以下に。

西之島は今も活発な火山活動続く NHKが撮影 2017年5月26日18時11分 - YouTube

NHKでも Worldの動画は少し違う絵があるという、面倒な状態でした。そもそもNHKの日本語動画はすぐリンクが切れてしまう。

 

 FNNは海保の動画です。溶岩流を映した赤外線動画はこちらの方が良かったです。 

 

 Franceinfoは再噴火前の動画も交え、同一アングルを並べるなど状況を理解しやすくまとめています。素晴らしい!フランス万歳! 

どうもフランス人は火山が好きなのだと思うんですよ。この完全に偏ったブログにもフランスからのアクセスが多いし。

 

さて 今回はこの辺で。ランドサット8の夜間画像に期待しましょう!

 

H290525ランドサット8の捉えた西之島

2017-05-25 ランドサット8撮影の西之島

 噴火を再開して1か月を超え、ますますお盛んな西之島。今回は噴煙が分身の術を使用し、話題と誤解を与えるなど侮りがたい活動をしています。

パンシャープン画像

さて本データはUSGSのEarthExplorerからです。

EarthExplorer

パンシャープン画像のバンドはB1青、B3緑、B4赤、背景はB8。画像の解像度は10m/pix。

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形が・・なんかドーモ君みたいになってきた。 

 

赤外フォールス画像です。

溶岩流を見る画像です。

バンドはB5青、B6緑、B7赤、背景はB8。画像の解像度は10m/pix。

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 B7とB6の高熱部が明瞭です。活動活発ですな。

 

熱赤外線画像

気になる北側の2本目の噴煙。

この実態を知るには多少低温でも温度差を認識できる熱赤外線でしょう。

そこでプレデター視界風のサーモグラフィー風熱赤外画像を、なんと初めて作ってみました。

熱赤外画像のバンドはB11です。

結局現在活動が見える場所以外に、熱源は見当たりません。新展開はまだ無いという事ですかね。

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この程度の画像を得るのに一苦労。ランドブラウザーさん復活してくれ!

  

位置合わせ

パンシャープン画像に海底地形図を乗せます。海岸線は5/2の海保から。

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南西の溶岩扇状地が結構広がった。水深も50mを超えるところまで陸地になったことがわかります。

 

赤色立体図のせ

日中写真の赤外フォールス画像を、夜間風に仕上げて千葉先生の赤色立体図に乗せます。

バンドはB6緑、B7赤、B4減算、背景は赤色立体図。画像のスケールは図示。等深線は10m毎。

赤色立体図はアジア航測の千葉先生のサイトから。国土地理院が2015年12月9日に測量した2.5mDEMのものです。

http://arukazan.jp/twentytwenty-master/index.html

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日中画像は目視確認できるし、ほぼ真上から写真を撮れているのでズレが少ない。第7火口位置に光点がばっちり乗りましたぞ。

 

判読です

今回も撮影は好天に恵まれましたね。

溶岩の流下方向は南西方向ですっかり安定しました。南西方向の溶岩扇状地は、一部で水深50mの等深線を超えた位置まで達し、海岸線からは活発に湯気が上がっています。

ここで噴火前に比べて拡大した陸地を測定すると、西側は0.04km2、南西の溶岩扇状地は0.11km2、合計0.15km2は広がっている。島全体の面積は2.82km2。スルツェイ島の2.80km2は超えたかな?

 

今回は噴煙が火砕丘北台地から立ち上って見えるということで、ちょいと検討してみました。

実は最近似たような噴煙を見ました。5/10にSPOT6の撮影した下の画像なのですが、5/25と同じように噴煙が2か所から上っているように見えます。

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画像は下記サイトから

Image Hunter by Apollo Mapping

  

すわ新展開かと思ったが、結局この時も北側に新たな熱源はなかった。

ということで、今回の噴煙については海岸部分の湯気以来のものと、火口からの噴煙由来のものの2本立てだったと考えます。

原因は下図参照で、上空と海面付近で風向きが違うという状況かと思います。

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熱い溶岩流が海岸から湯気を出していますが、この海岸付近の湯気は北北西に向いて、湯気は一旦水蒸気となって薄くなったのち、さらに上昇して上空に至って2本目の噴煙として復活している、と見ました。

 

以上です。

お気楽にコメントしてください。

 

H290521ランドサット8の捉えた夜の西之島

2017-05-21 ランドサット8撮影の夜の西之島

9日ぶりにランドサット8が西之島を夜間観測しました。

当日は低気圧の接近に伴い上層に雲がありましたが、溶岩流は確認できたと思います。

 

本データはUSGSのEarthExplorerからです。

EarthExplorer

今回は高層の雲の影響なのか、噴煙及び火映が見えませんでしたので、雲と溶岩流の様子から。

バンドはB10ネガポジで青着色、B7高感度で赤、B6緑、B5白。画像の解像度は10m/pix。

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 薄い雲を透過してB7、B6、B5で活動を確認できました。火口及び北側の流出口で温度は高く、活発な活動が伺えます。

 

溶岩流の表示

高温だけ明瞭にして表示します。バンドはB7赤、B6緑、B5白。画像の解像度は10m/pix。

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やはり雲の影響なのか、多少ぼんやりしている印象ですね。

日中画像乗せ

バンドはB7赤、B6緑、B5白。画像の解像度は10m/pix。背景日中画像は2017/2/18のランドサット8から。

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南西部の海岸線を超えた溶岩流が横方向に広がった印象を受けます。

 

位置合わせ

海底地形図に溶岩流画像を載せます。

海岸線は西半分だけ5/2の海保の判読からで、東半分は平成27年9月ごろのものです。直らんな。

また海底地形のコンタは、50m毎に計曲線が入っています。データは海保のモノからトレースしています。 縮尺は図示。

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赤色立体図乗せ

西之島の赤色立体図はアジア航測の千葉先生のサイトから。国土地理院が2015年12月9日に測量した2.5mDEMのものです。

http://arukazan.jp/twentytwenty-master/index.html

 

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海岸線の成長とともに、陸上部分の2回塗りもさらに広がりましたね。

 

判読です

今回の観測は高層の雲にかかったものの、概ね溶岩流の活動は確認できると思われます。

噴火活動の内容に大きな変化はないようです。相変わらず火口及び北側の流出口は高温で、位置的な変化はないものと思われます。

小夜浜から西に張り出したローブは活動を確認できません。動きを止めたままのようです。

南西の海岸線から張り出した溶岩扇状地は面積を増やしました。光点の中心を結んだ測定では、再開前に海岸線に対してこの部分だけでも9万m2は広がったと読めます。

この海岸線は溶岩扇状地最南端の一部でしか、当初水深50m付近の位置からは拡大できていません。流出方向の安定する中ですが、今後は面積の拡大に時間が掛かることが予想されます。

 

今回は以上です。何とか見えて良かったです。

コメント等はお気楽にどうぞ。

H290512ランドサット8の捉えた夜の西之島

2017-05-12 ランドサット8撮影の夜の西之島

5/9の日中撮影とともに、5/12も撮影は好天の中行われました。当日風はおそらく南南西の弱い風で、噴煙は微小だったようです。

おかげで夜間ながら、西之島の火山活動の全容を判読できる画像を得られました。

 

火映の表示

本データはUSGSのEarthExplorerからです。

EarthExplorer

バンドはB10ネガポジで青着色、B7高感度で赤、B6緑、B5白。画像の解像度は10m/pix。

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 噴煙は火口付近から北北西に、火映として紫色に見えますが、量は少ないようです。

 この画像では、熱赤外線であるB10をネガポジにして青着色していますから、高温部分が黒くなります。溶岩流によって海水が暖められて黒く流れている様子が見て取れます。

 

同じような組み合わせですが、熱赤外線をネガポジにしないで重ねてみます。

バンドはB11青、B10青着色、B7赤、B6緑、B5白。画像の解像度は10m/pix。

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 こうすると火映の部分は純粋に赤くなります。温度は低いのに、B7が輝いているのは、火映だという判断になります。

 

溶岩流の表示

バンドはB7赤、B6緑、B5白。画像の解像度は10m/pix。

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 高温の場所はB5の白ではっきりします。溶岩流出口の位置で最も高温になるのが普通です。

 

日中画像乗せ

バンドはB7赤、B6緑、B5白。画像の解像度は10m/pix。背景日中画像は2017/2/18のランドサット8から。

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 噴煙や湯気の無い2017/2/14の画像が、とりあえず具合良いですね。

 

位置合わせです

海底地形図に溶岩流画像を載せます。

海岸線は西半分だけ5/2の海保の判読を基に更新しましたが、東半分は平成27年9月ごろのものです。中途半端でいかんな。

また海底地形のコンタは、流出している南西付近を重点に少し描き足しました。データは海保のモノからトレースしています。

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 コンターも海岸線も更新していたんですが、ファイルを壊してしまって残念。ぼちぼち作り直しますのでご勘弁を。

 

赤色立体図乗せです。

赤色立体図はアジア航測の千葉先生のサイトから。国土地理院が2015年12月19日に測量した2.5mDEMのものです。

http://arukazan.jp/twentytwenty-master/index.html

f:id:gravireyossy:20170514121612j:plain

 2017/5/2に比べて、南西部の溶岩扇状地は広がっていることがわかります。

 

判読です

溶岩流出口は火砕丘の北側で変化なし。温度はここが最も高く、B4の可視光赤でも微弱にですが感がありました。

主な溶岩流である南西方向の流れは、西頬付近まで乗り上げる形で成長しています。

海岸線は水深50m付近まで前進していますが、5/9の形状に対しては大きく変化がありません。活発な溶岩の流出が起きていると思われますが、海水温の上昇を伴うほどに、海底への流出がおきていると考えます。

また小夜浜から張り出した西側の溶岩流は動きを止めていましたが、海岸付近に光点が現れました。流れが復活したというよりは、溶岩膨張亀裂が成長始めたのではないかと思います。供給圧が高まれば、溶岩トンネルが破れて成長を始める可能性もありますね。

 

 

とりあえず以上です。

コメントはお気楽にどうぞ~。

LandBrowserのクレジット表示 The source data were downloaded from AIST‘s LandBrowser, (http://landbrowser.geogrid.org/landbrowser/index.html/). Landsat 8 data courtesy of the U.S. Geological Survey.