閣下が不用意に打たれたblog

噴火で変遷する西之島の火口や海岸線、暗礁などの海底地形等の図を衛星画像や各種資料から作成してます

H290813ランドサット8の捉えた西之島

西之島の噴火活動に決定的変化が訪れた

びっくりタイトルですが、まず紹介するのは8/2に海保の観測した西之島です。

撮影は火砕丘の西側からですが、南風を受けて大量の噴煙が北方向に流れています。

しかしいやいやこれ、噴煙が茶色過ぎだよね。はた目には水蒸気っぽさが感じられない乾いた印象です。

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引用は火山活動解説資料(西之島)の2017/7から。

http://www.data.jma.go.jp/svd/vois/data/tokyo/STOCK/monthly_v-act_doc/tokyo/17m07/326_17m07.pdf

 

久々に晴れたと思えば西之島

久々に好天となった西之島の日中撮影です。しかしながら!火砕丘に熱源は無く、溶岩の流出および火口からの火砕物の噴出等の熱活動は、休息状態に入ったと思われました。

とりあえずパンシャープン画像。

ランドサット8のデータは産総研のランドブラウザーから。

LandBrowser

画像のバンドはB4赤、B3緑、B2青50%、B1青50%、背景はB8。画像の解像度は10m/pix。

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熱赤外線のサーモグラフィー画像

今回は明瞭な活動位置のピークがない状態です。色合いを引き上げてみると、火砕丘の北東側に温度の高い領域があるのは意外なところです。

使用バンドはB10。画像の解像度は10m/pix。グラデーションは魂で読み取って頂きたい。

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上のサーモグラフィー画像にB8をかぶせます。

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今回高温の火砕丘の北東側は活動休息時期にも余熱を持っていた場所です。ただ温度自体は低いんですが。

B7熱源画像

いつもと違う処理でB7の熱感知領域を表示してみます。

B7赤、B6緑、B5減算、B8スクリーン50%。画像の解像度は15m/pix。B7、B6、B5は本来の解像度の30m/pixのまま使用しています。

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再噴火後の活動と関係ない所まで赤く見えていますので、日光の影響も十分に有ると思ってください。

特筆したいのは火砕丘です。完全にB7の輝きがすっぽりと抜けています。B5の減算処理の影響もあるでしょうが、高温の場所が無いという状態でしょう。

再度パンシャープン 

今回は記録を確定させたいのでランドサット8の画像解像度を5m/pixに上げてパンシャープンを作成。使用バンドはB4赤、B3緑、B2青、B8背景。いずれも本来の解像度から再サンプリングで解像度を高めています。

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なんかの横顔に見える。まあこの解像度はなかなか良いですね。

位置合わせ

今回の位置合わせは上のパンシャープンで行きます。

画像の位置は変えていませんが解像度を少し上げ、サイズを大きくしました。説明もがっつりいたしましょう。

当ブログの「位置合わせ画像」の範囲は2015/3頃以降一定で、東西に東経140-51-50から140-53-40の間、南北に北緯27-14-00から27-15-50の間です。

上載は錆び色で平成噴火前の旧西之島。緑のペイントで昭和噴火前の暗礁図。青線で国土地理院の2016/12の海岸線を0.5度左回転処理。オレンジは2015/9頃の海岸線に再噴火後の海岸線に2017/5/2と2017/6/29の海保判読から追加し、特に西側溶岩扇状地の最大位置は7/30のWV2画像から読み取ったもの。等深線は海保の2017/6/30海底地形図から読み取り。スケールは図示。

南西溶岩扇状地と西の溶岩扇状地に数値を旗上げましたが、国土地理院の青線に対して増加した面積をm2単位で表示しています。

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B7熱源画像乗せ

B7の熱感知領域画像を位置合わせします。最近の溶岩流や溶岩トンネルの位置と、火口の参考位置を乗せました。これから画像の解像度は落としますが、画像の切り取り範囲は一定です。

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今までと比べると表面的には冷えてしまっている。火口がこんなだとはなあ。

ALOS-2 だいち2号の撮影した西之島

参考にJAXAの運用するだいち2号の撮影した、2017/8/4のサムネイル画像を再サンプリング処理して、位置合わせに乗せました。このサムネイル画像原本の著作権JAXAにあります。

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 だいち2号のデータは下から取得しました。

衛星データ利用促進プラットフォーム

このサムネイルは100m/pixの低解像度で提供されているのですが、本来は3m/pixを誇る高解像度で雨にも負けず風にも負けぬ、合成開口レーダーによる画像です。 レーダーは東方面からの照射で、画像は砂利浜が暗く岩場は明るく表示される傾向にあります。ステルス性の低い船舶などが近傍にいるとばっちり反応したりします。

これを見ると、もう少し西側溶岩扇状地は北方向に進延していると思ったんだが、多少の進延に留まったようです。

 判読です

熱活動はほぼありませんが、高感度に読み取ると最も明るい光点は西側溶岩流の先端部分にあり、活動というよりは崩落した溶岩流先端の余熱と思われます。再噴火後の溶岩流の範囲には薄い光点が点在してあり、これらは溶岩膨張亀裂の存在等と予想します。

火口の熱活動が無く、火口周辺が硫黄色に染まる現象も見えません。8/2の海保画像では茶色掛かった大量の噴煙が確認できましたが、この撮影では雲と同色の噴煙以外に活動が見当たりません。

 火砕丘全体は北東部分を除き周辺の溶岩台地より温度は低く、火砕物の吹き出しと堆積を伴う活動が存在していないことを示しています。

ランドサットで見る火山活動は、停止した部位はすぐに冷えきって見える傾向にありますが、印象として今回は5日程度以上は流出活動が止まっていると思われます。

海岸線は台風5号の影響を懸念しましたが、溶岩扇状地の浸食は限定的だったようです。堆積現象は西之島の南東部分で浜の成長が若干見られますが、それ以外の場所では国土地理院の海岸線より内側に白い波浪が入り込んでいる箇所が多いようです。

考察

再噴火から3カ月と20日程度ですが、このまま噴火活動を停止するかというとそうとも思えないのが西之島の、粘り気の少ない溶岩による粘り強い火山活動です。

例えば1期目は2014/8頃に活動の停滞があり、9月に大流出がおきました。 

 

今回の活動の停滞によって溶岩トンネルは流動性のある部分が狭窄するでしょうから、再度流出がありレートが上がると、古いトンネルには入りきらずに新展開となると思います。

これがどこに起きてどこに流れるのか、あるいはこのまま活動を長期に休止するのか、全く読めなくなりました。

特に活動を停止したばかりの西之島は、爆発的噴火の恐れが高まったと自分は考えます。しばらくは活動中より危険だと思っていて、鳥はともかく人間としては気象庁の警戒範囲を厳守すべきで、安易に近寄れないと思って正解でしょう。

この後は干渉波による地形の変化や地震活動の分析などを注意して見守ることになるかと思います。

 

今夜はランドサット8の夜間撮影でもあり、うまく晴れ間に入れば日光を気にせずゴリゴリ解析したいと思いますね。

記事は以上です。コメントはお気楽にどうぞ!

H290731ランドサット8の捉えた夜の西之島

今回は台風直前スペシャル!ではないですが、ディジタルグローブ社の商業地球観測衛星ワールドビュー2号(WorldView-2)が、2017/7/30に西之島を撮影したサンプル画像を処理しましたので、海岸線の変化確認の意味もありご紹介します。


WorldView-2は宇宙技術開発株式会社、SEDで概要が紹介されています。

ワールドビュー2号(WorldView-2)衛星・センサの概要 宇宙開発と共に 宇宙技術開発株式会社 衛星画像データサービス 地球観測衛星画像・衛星写真・映像・素材 衛星データ解析と販売

サンプル画像データは下記サイトから。

https://imagehunter.apollomapping.com/

 2017/7/30のデータは2枚あります。雲や噴煙がずれて乗っているので、比較暗を使うところですが、2枚ばかりなので乗算で被せて処理しました。

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無駄にでかいけど勘弁。解像度は4.208m/pixくらいかな。本来は超高解像度の衛星ですから、大迫力の画像なんでしょう。

今後比較したいので、参考までにいつもの位置合わせ画像に当てはめて乗せておきます。

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夜雲の下に

さてランドサットウィークも最終撮影日ですが、台風5号の迫る中、薄そうに見えて強力な雲が西之島には乗ってしまいました。

データはUSGSから。

https://earthexplorer.usgs.gov/

 

今回はB6やB5には感が無かったので、基本的に西之島は見えていなかった状態と思います。

画像はネガポジのB10青着色。超高感度B7赤と、超高感度で足切りしたB7緑。

とりあえず広範囲表示にして、画像の解像度は120m/pixです。

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まるで雲を育てているような西之島です。台風のふー子を育てている最中の、のび太君の気持ちで見守ってほしいですな。

 

で、これを拡大すると以下の感じ。

いつもより縮小して画像の解像度は15m/pix。ランドサット8本来のB7解像度は30m/pixですのでこれでも拡大してはあります。

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サーモグラフィー風合い画像

B10をサーモグラフィーで表示します。画像の解像度は15m/pix。グラデーションは今回も胆力で読み取ってもらいたい!

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なんつってこれではなんも分かりませんな。熱があるようには見えないわけです。

 

次はいつもの溶岩流画像に近い雰囲気で。

超高感度B7赤と、超高感度で足切りしたB7緑。画像の解像度は15m/pix。

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感度があったのはB7だけなので、無理やり画像だと思ってください。

 

2017/6/26の日中画像B8に上の溶岩流風味画像を乗せましょう。

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おお、なんかそれっぽいぞ!西側溶岩扇状地の活動域は健在という事かな。

 

だけど今回はここまで。いつもの火映の表示なんてレベルではない、超超~高感度画像過ぎて活動の判読はおこがましい。

今回の西之島はちゃんと活動している、という御意向であるという事で皆様、ここは忖度してやってください。

 

使い方変?

 

ええい記事は以上です!コメントは忖度不要で!

H290728ランドサット8の捉えた西之島

海から西之島を撮影

最近は海から撮影された素晴らしい画像も沢山紹介されてきました。少しずつ紹介したいと思いますが、今回は2017/7/21の明け方に佐伯克人さんの撮影された美しい西之島です。

データはこちらから。

佐伯克仁 | Facebook

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西側の溶岩扇状地から湯気の立つ様が写っています。中央の火口は南南西に向かう傾斜となっているようですね。

 

今回は雲隠しに見舞われた西之島

さて前回の日中撮影は大事な熱活動を噴煙で隠していましたが、今回は雲、スポットで来ましたよ~熱活動域は外したモノの雲の影に入れてくれました。残念。

データはUSGSのEarthExplorerからです。

https://earthexplorer.usgs.gov/

パンシャープン画像

台風5号が東北東にあって迷走している状況の中、うねりが浜に押し寄せて海岸線は広い範囲で白くなっています。

バンドはB1青、B3緑、B4赤、背景はB8。画像の解像度は10m/pix。

 

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 フォールス赤外線画像

バンドはB7赤、B6緑、B5青、B8の低感度画像で減算して海岸線に特徴を表示しています。画像の解像度は10m/pix。

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夜間風溶岩流画像

バンドはB7赤、B6緑、B4減算。画像の解像度は10m/pix。

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サーモグラフィー画像

バンドはB10。画像の解像度は10m/pix。グラデーションは根性で読み取ってください。

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位置合わせです

画像はパンシャープン画像。水深は海保の海底地形図から、海岸線は国土地理院の12/20測量のデータから。赤いのは平成噴火前の海岸線です。

 

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火口に噴煙が留まっていないため、すり鉢が見えているようです。

溶岩扇状地は若干大きくなっていますが、6/26海岸線からの変化量としては小さいですねー。

今回は海岸線の内側まで入り込む波浪が気になりますが、低感度の画像ではほぼ海岸線の通りの地形が浮かび上がりますので、大きく変化しているわけではありません。

夜間風位置合わせ

夜間風に仕立てた溶岩流画像を位置合わせさせます。

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判読です。

この画像からは火口はすり鉢の形状も見え、火口の直径は80m程度と読みました。

また西側溶岩扇状地は日中画像においても先端部分が水深50mの位置に掛かりました。この位置での拡大は斜面形状からも遅くなると思われます。

ところで溶岩流がトンネル化されたころから最近にかけて、面積の拡大が遅い気がしていますが、ざっくりレートの計算をします。

6/26に比べて面積の増大は40000m2、埋めた場所の平均水深が35m、そこに乗った平均標高を10mとします。経過32日で1日当たりの平均流出溶岩量は5.6万m3/日。全量がこの場所に来ていると思いますので、これが噴出率になります。

20万m3/日程度あった5月と比べるとレートは落ちていると言えそうです。

一度レートが落ちると、溶岩トンネルは狭くなると思われます。今後噴出率の増量変化に溶岩トンネルが耐えられず新展開、というのは十分に考えられますので、留意して見たいところ。

 

記事は以上です。

 

H290724ランドサット8の捉えた夜の西之島

太平洋の灯台といえば西之島

夜間撮影は今回も好調、雲の影響なく西之島は撮影されたようです。

ストロンボリ火山はその活発かつ継続的な活動から地中海の灯台と呼ばれていましたが、昨今の西之島の火山活動も遜色なし、ここは灯台として名乗りを上げてもらいたい、そんな風に思っているこの頃であります。

データはUSGSのEarthExplorerからです。

https://earthexplorer.usgs.gov/

 火映の表示

活動部位は中央火砕丘の火口、そして西側の溶岩扇状地ですね。
火映は南西の雲を照らすものが見えますが、活動部位の観測には影響なしと。

画像のバンドはB10青着色、B7高感度の赤、B6緑、B5白。画像の解像度は10m/pix。

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溶岩流画像

画像のバンドはB5白、B6緑、B7赤。画像の解像度は10m/pix。

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サーモグラフィー画像


B10やB11の熱赤外画像の解像度は100m/pixなので、仕上がりはぼんやりとしたものになるのが特徴ですが、噴火再開後の台地はうっすらと熱を帯びているのが見えます。
バンドはB10。画像の解像度は10m/pix。

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 日中画像乗せ

溶岩流画像にB10のネガポジ青着色と6/26撮影の日中画像を乗せます。

画像のバンドはB10青着色、B7赤、B6緑、B5白、B10ネガポジで青着色。画像の解像度は10m/pix。

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 位置合わせ

ランドサット画像のバンドはB10青着色、B7赤、B6緑、B5白、B10ネガポジで青着色。

参考の海岸線はベージュで2015/11頃、5/2の海保、6/26のランドサット8。緑と紫の等深線は海保の資料から。透過緑ペイントで暗礁図。等高線は国土地理院の12/20データから。スケールは図示。

 

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火口の位置を見るとパス205の撮影位置が若干北にずれる傾向にあるのではないか?と思っているんですが、確証が持てないため据え置いています。

赤色立体図乗せ

 溶岩流画像に2017/6/30に国土地理院の平面図から千葉先生が作られた赤色立体図、通称ロボ西之島に乗せます。
例によって国土地理院の図は0.5度回転してありますよ。

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判読です

溶岩流は完全にトンネル化され撮影では確認できない状態が継続しています。

火口からの噴火活動は活発で、火砕丘はほぼ全体的に高温の火砕物が撒かれている状態です。

海岸線の位置の活動領域は2017/7/15の夜間画像と比べると、ほぼ変わっていません。変化量は若干20~30m程度の進延があるようです。

旧島の前面に当たる場所を埋めているので、慌てずゆっくり活動してもらえればと思う次第。

 

記事は以上です。コメントはお気楽にどうぞ。

LandBrowserのクレジット表示 The source data were downloaded from AIST‘s LandBrowser, (http://landbrowser.geogrid.org/landbrowser/index.html/). Landsat 8 data courtesy of the U.S. Geological Survey.